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雨上がりの放物線

究極の三日坊主が居場所を見つけるまでの物語

ブラックスワン-あるいはロングショートへの罵詈雑言

タレブ氏の書いた「ブラックスワン(リスクと不確実性の本質)」を読んだ。衝撃だ。彼は僕のやろうとしている戦略を全否定している。アンチ・クオンツというか、アンチ・緩いクオンツだ。順を追って要旨をお伝えしたい。

 

ブラックスワンとは?

直訳すれば黒い白鳥。かつて全ての白鳥は白かった。オーストラリアに出向いた学者が黒い白鳥を見つけるまでは。よってタレブ氏はこれを「稀に起こる大惨事(祭)」、「予想できない危険な事象」の隠喩として用いている。

このブラックスワンにはタレブが言うには3つの特徴がある。

1.論理的には予測がつき辛い

2.与える影響が極めて大きい

3.過ぎ去ってしまうと、あたかも予測がつくものであったように見える

 

なるほど。面白い。リーマンショックソ連崩壊、ナチスの台頭、ナポレオンの敗北、ローマの興亡。後から振り返る僕らは全ての出来事に因果があるかの如く説明できる。そして、これらの因果を学ぶ事で将来なにかしらの予測が建てられると考えてる。あわよくばそれを利用して一儲けしようとも。タレブが言うには、これらは全部僕らの脳が効率よく情報を処理するために起きる錯覚らしい。ランダムな情報より意味のある、つながりのある情報の方が覚えやすい。つながりを元にひとまとめに置いておけるからだ。

だから僕らは出来事から無理に因果を作り出す。つながりが感じられる情報だけが強調されて脳に入ってくるのだ。

本当は非常に複雑で入り組んだ世界、システムを頭で無理やり作られた単純な因果で理解しようとする時、ブラックスワンが生まれる。(つながりを組み立てるのに)理想的な世界を作る過程で出来る先入観が目を曇らせて「予想外」を作るのだ。

 

ブラックスワンが生じるのはこの社会が「ベキ乗分布」でできているからだ。これは統計で使われる「正規分布」に比べて広い分布を持つ。このベキ乗分布は「計算しづらく」、「推測もしづらい」。要は複雑で、めんどくさいのだ。本当はめんどくさい世の中を計算しやすく、先も読みやすい正規分布を用いて理解して支配した気になっているから、いざベキ乗分布に見られる大きな動きが起きた時にパニックを起こし、思考が止まって損を出すんだ。

 

そういう訳でタレブは今までのクオンツを否定する。難しい世の中を簡単に解釈しようとすんじゃねーよ。頭の中で世界を勝手に決め付けて、それを前提に考えるから穴ができる。頭の中で出てきたリスクが全部だと思うなよ。正規分布なんざに頼ってちまちま儲けるのは目をつぶって幅のわからない橋を渡るみたいなもんだ。溜め込んだところでそれを突かれて、今までの賭け金が全て吹き飛ぶ。

 

そういう訳で、タレブは「バーベル戦略」を推薦する。賭けを2つに分けるのだ。一方は短期米国債に代表される「スーパー安全資産」、これはブラックスワンが来ようと吹き飛ばない、値上がりも値下がりも見込めない碇の役割を果たし、資産全体の85~90%を占める。もう一つは「スーパーハイリスク資産」、レバレッジかけてオプションでもなんでも利用してブラックスワン時に超巨大な儲けを出す機構を作るのだ。通常時は負けてていいのだ、どうせごく一部分だし。動きの大きさは果てしなく大きい、よって勝つ時の儲けも果てしなく大きくなる、らしい。

 

 正直どうなん?色々無理あると思いますが。まず、ブラックスワンによる影響は予想できないので、短期米国債が安全であるとは言い切れないと思う。絶対に安全な資産なんて一つも存在しないはずだ、ベキ乗分布を考えるなら。第二に、予測できないブラックスワンで如何に儲けるのか?そんな事が出来るなら投資なんていうゲームとうに破綻しているはずだ。まあタレブは金融工学に精通しているのでクオンツの「穴」は見えやすいのかもしれない。第三に、タレブは3回しか儲けていないらしい。本の後書きで書いてる。クオンツショック、リーマンショックを含むいずれも金融市場に危機時だ。無論「大儲け」した回数だろうが、そんな少ない回数しか快感を感じられずに楽しいのだろうか。少なくとも、僕はいろんなタイミングで色んな波に乗って楽しみたいな。