雨上がりの放物線

究極の三日坊主が居場所を見つけるまでの物語

予測ビジネスで儲ける人々-無知と無知に頼るカモ

ブックオフで300円で買えるハードカバー。つまらないところも、わからないところもあるけど、面白くて勉強になる本だった。

 

この本が伝えようとしている事は一つだけ、第9章のタイトルに出てきている、「確実なのは不確実性だけ」。良いセンスだ。

この本は気象学者から始まり、その他のあらゆる予測行為、将来の経済、株価、技術、社会を予想する行為は全く意味が無い。現在のトレンドを後追いする事は出来てもトレンドの転換点を安定して見つける事は今まで出来てい無いし、これからも出来無いと述べている。僕は僕に関係ある経済と株価予測の不可能性についてここでは書いていこうと思う。

 

なぜ長期の経済予測、株価が不可能なのか?

すこし違う話になるが、第2章で筆者は気象学者について述べている。5分後の天気はだいたい当てられる。1日後の天気は当てられ無いでも無い。1ヶ月後はほとんど不可能だ。このように天気を当てるのが難しくなっていくのは気象がカオスだからだ。

 

カオスとは、僕らのよく知っている物理法則によって支配されているが、高い非線形性によって初期条件のほんの少しの違いが大きな変化を生み出し結果的に予測が凄まじく難しい事象、そのような振る舞いを指す。よく聞くバタフライ効果ってやつだ。蝶が羽ばたく事が巡り巡ってハリケーンを生み出す(かもしれ無い)。

このカオスは一応完璧な物理法則によって成り立っているので、予測は難しいが完璧な答えが存在する。そして、短期ならそこそこの精度で予測できる。

 

そして、経済もまたカオスと似た挙動を取る事を見つけた学者がいた。だから経済もまた短期的には予測可能なんじゃ無い?短期的に予測できるならそこからお金引きずり出せるんじゃ無い?と考えたわけだ。

でも、経済はカオスじゃ無い、ほんとは複雑系なんだ。だからカオスで得た知見を用いて経済を予測するなんて馬鹿馬鹿しい話なんだよ、と本書は述べている。

 

複雑系とは

難しいのでゆっくり行きます。まず、複雑系は多数の要素からなる。たくさんの同じ要素かもしれ無いし、もしかしたら複数種が混じっているかもしれ無い。まあとりあえずたくさんいる。

次にそれらの要素は互いに影響を及ぼし合う。AはBを引きつけ、Cを遠ざけ、Dを虐げる。そこには社会が出来上がる。全体として一つの生命、あるいは連携した組織として振舞うものが複雑系だ。そして、出来上がる組織は非常に大きい数の要素からなっているので、要素の性質からは組織の性質は予測でき無い。これが複雑系の予測が出来無い理由である。

 

よし、ようやく経済の話に戻れる。上の文章を元に経済が予測の出来無い理由を挙げていく。

1. 社会には絶対的な自然法則が無い。(ミクロ、マクロレベルの両方において)

2. 経済活動をするそれぞれの要素(個人や企業)はそれぞれ密接に関わりあう。そのつながりこそが経済であるため、経済を予測するには全要素間の関わり方、関わる量を調べる必要がある。

3. 各要素の関わり方を決定する事は非常に難しい。例えば、渋滞を緩和するために高速道路を立てる事が渋滞の重症化へとつながる事もあるように。それぞれの関わり方は正負のフィードバックループの重ね合わせで出来ている。

4. 複雑系は秩序だった期間の合間に起きる混乱期が存在する。これは予想され無いからこそ混乱をおこす。

5. 人間が勉強するように複雑系も環境に適応し、振る舞い方を変える。よって以前に確立された理論も使えるとは限ら無い。

6. 複雑系にサイクルは無い。歴史は繰り返すかもしれ無いし、永遠に繰り返さ無いかもしれ無い。

 

正確には経済は「非線形複雑適応系」らしい。まあただの複雑系より難しいって話だ。個々の要素の関わりあい方に非線形性があるので、カオスっぽい動きも入って来ますよ、と。

 

 

本を読んで思いついた投資戦略

キーワードは「フィードバックループ」だ。経済には正と負のフィードバックループが存在する。負は秩序を守る働き。慣性力、反作用、需要と供給、平均への回帰、規模による収益遁減など。

正は秩序を壊し、新たなルールを作る動きだ。成功が成功を呼んだり、混乱が混乱を生み出し、壊滅へと繋がるような動き。基本的にこちらの動きは素早く、大きく、計り知れ無いほど激しい。タレブがいうブラック・スワンも正のフィードバックループの一種だろう。

7月の間に運用したロング・ショート1号は負のフィードバックを用いている。こちらが割高になったから下がるだろう、割安のやつは上がるだろう。という機構を利用して安定した利益を出す戦略だ。だからこそ最後の週にサントリーに正のフィードバックループが起きて大損を出した。

つまり、負のフィードバックループが正に切り替わる瞬間を見つけられればいいわけだ。今、株価は秩序を保つ局面なのか、それともこれから自触媒反応のようにぶっこわれていくのか。どっちにあるのか。

値動きと出来高の動きから局面を理解する。適当な値(xとする)を見つけ、閾値を設定する。そのxが閾値より小さいと時、負のフィードバックループにあるとし、自体はこれから収束する可能性が高いと判断。閾値より大きい時、これから変革が始まると考える。負のフィードバックは対数っぽいし、正のは指数っぽく動きそうなので見分けられそうなきがするけどなー。ちょっと複雑なモメンタム戦略って感じ。

問題は本当に欲しいのは正のフィードバックループにあるという確認じゃなくて正のフィードバックループにはいる前兆なのだが、まあそれはこれからぼちぼち考えていこう。

 

長くなってしまった。