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雨上がりの放物線

究極の三日坊主が世界に居場所を見つけるまでの物語

「複雑系」とは何か-ともすればオカルト

書評

講談社現代新書吉永良正著。

サンタフェ研究所の内部構造なんて僕には興味ない。出来れば「『複雑系』とは何か」について紙面を使ってくれ。

 

前に「予測ビジネスで儲ける人々」、や「非線形科学」で少し複雑系には触れていると思うので手短に複雑系について書こう。

複雑系は多数の小さな要素からなる。そして要素間には非常に単純な物理法則に従った相互作用を持つ。要素間の相互作用の理解は簡単だが、それが積もり積もって集団全体に予想できないような「社会性」が生まれる。このような性質を持つシステムを「複雑系」と呼ぶ。

アリや渡り鳥の集団、多くの生き物の生態系において観察される。

 

そして複雑系研究は以下の2つの前提を元に成り立っている。

1. 全ての複雑な現象には必ず内奥に共通のルールを持つ。

2. そのルールはコンピュータで計算できるくらいの単純さを持っていること。

そしてこの更に奥に存在するのが研究者ゲルマンの言葉「表面的な複雑さは深部の単純さから生まれる」。

笑っちゃうような希望的観測だな。みんな推理小説の読みすぎなんじゃないだろうか。この世の全てにルールがある。本当にそうだったらどれだけ素晴らしく、面白いだろう。あらゆる出来事は一つの、あるいは複数のルールに縛られていると考えるのは人間の脳がなせる錯覚だ。初歩的な認知心理学の本を読めば出てくるぞ。そういう意味でこのロマンに満ちた「複雑系科学」とは人間の業から生まれるべくして生まれたのだ。

でも僕はこういう狂気が好きだ。本当に厳密な論理からは生まれなさそうなこの情熱が好きだし、こういう情熱こそが世界を変えるのだ。

 

本書で紹介されている複雑系を説明するキーワード

キーワード1: 複雑適応系

適応系は示すのは「永遠に変化し続けるシステム」だ。上記のように「複雑系」は多数の要素からなり、その要素間相互作用からなる集団の性質が重要だ。アリの例で言えば、個々のアリは寄り集まりアリ小隊を形成し、それらは中隊、大隊、全軍へと一つ一つのレベルが「積み木」のようになっている。そして、ここの要素は常に自分の周りの環境を感じ取って状態を変化させていくのだ。つまり、その積み木は変形し、再配列し、ある場面では減少し、増加し、分裂し、合体する。この積み木に「最適解」は存在しない。常に周りの情報を汲み取ることで永遠に変化し続けるのだ。

 

キーワード2: カオスの縁

ライフ・ゲームはむちゃくちゃ面白いから良かったら自分で検索してみてください。スクリーンセーバー代わりに流しておくのがオススメです。

ライフ・ゲームは生命が織りなすパターンを説明し、それの終着点は4つに分類される。

1. 絶滅(一つも生命が残らない)

2. 静的平衡状態(死んだ数とちょうど同じだけ生まれ、一つの幾何学的パターンを作る)

3. カオス(予測の難しい変動を永遠にし続ける)

4. クラス4(予測し辛い変動を起こしたり、かと思えばパターンを作ったりする)

このクラス4こそが複雑系の生息領域らしい。λパラメータという値を用いて分析するとクラス4のあたりで系の「複雑性」(説明が難しいな、「多様性」「可能性の広さ」)が最大値をとるらしい。これよりλが小さい値では「平衡状態」を、大きい値では「カオス」に向かっていく。よって、このクラス4はカオスの縁に位置するのだ。これは物理減少における「相転移」に値する。つまりクラス4は臨海値、相転移点を意味する。

 

キーワード3: 自己組織化臨界

このキーワードに関する説明は明らかに他に比べて乏しい。エネルギーを消費して自身の動的平衡を創り出し始める臨界点のような事を言っている、気がする。カオスの縁と似た概念であることは伝わるが、その差異についての言及は避けられている。

 

キーワード4: 創発

これは簡単だ。系の要素間相互作用により、要素自体には無い性質が系全体に備わる事。まさに、「全体は部分の総和ではない」を意味する。

 

この後には日本と欧米の複雑系研究の違いとか、人工生命の話とかあるが、関係は無い。

さてさて、我がロング・ショートは何を読めば進化するんだろうか?

相転移に関する本読んで、先が無いと感じたら大人しく相場について勉強しますか。